♪踊っちゃった〜、踊っちゃった〜、踊っちゃった〜 Yes!! ― 末期症状の鎌倉幕府      作:kari

 

   この作品は、某研究者(ハンドル・ネームkari)氏から2011年5月18日投稿戴いた作品を作者の許可を戴いて転載するモノである。

 

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  ♪踊っちゃった〜、踊っちゃった〜、踊っちゃった〜 Yes!!

    ― 末期症状の鎌倉幕府      作:kari

 

 

 [原文]『太平記』巻五、相模入道弄田楽并闘犬事

  又、其比、洛中ニ田楽ヲ弄事、昌ニシテ、貴賎挙テ是ニ着セリ。相模入道、此事ヲ聞及ビ、新坐・本坐ノ田楽ヲ呼下シテ、日夜朝暮ニ弄事、無他事。入興ノ余ニ、宗トノ大名達ニ田楽法師ヲー人ヅツ預テ、装束ヲ飾ラセケル間、是ハ誰ガシ殿ノ田楽、彼何ガシ殿ノ田楽ナンド云テ、金銀・珠玉ヲ逞シ、綾羅錦繍ヲ妝レリ。宴ニ臨デ一曲ヲ奏スレバ、相模入道ヲ始トシテ一族大名、我劣ラジト直垂・大口ヲ解デ擲出ス。是ヲ集テ積ニ、山ノ如シ。其弊ヘ、幾千萬卜云、数ヲ不知。

  或夜、一献ノ有ケルニ、相模入道、数盃ヲ傾ケ、酔ニ和シテ立テ舞事、良久シ。若輩ノ興ヲ勧ル舞ニテモナシ、又狂者ノ言ヲ巧ニスル戯ニモ非ズ。四十有余ノ古入道、酔狂ノ余ニ舞フ舞ナレバ、風情可有共覚ザリケル処ニ、何クヨリ来卜モ知ヌ、新坐・本坐ノ田楽共十余人、忽然トシテ坐席ニ列テソ舞歌ヒケル。其興、甚尋常ニ越タリ。暫有テ拍子ヲ替テ歌フ声ヲ聞ケバ、「天王寺ノヤ、ヨウレボシヲ見バヤ」トゾ拍子ケル。或官女、此声ヲ聞テ、余ノ面白サニ障子ヨリ是ヲ見ルニ、新坐・本坐ノ田楽共ト見ヘツル者、一人モ人ニテハ無リケリ。或、嘴勾テ鵄ノ如クナルモアリ、或ハ身ニ翅在テ、其形山伏ノ如クナルモアリ。異類異形ノ媚者共ガ、姿ヲ人二変タルニテソ有ケル。

  官女、是ヲ見テ、余リニ不思議ニ覚ケレバ、人ヲ走ラカシテ城入道ニソ告タリケル。入道、取物モ取敢ズ、太刀ヲ執テ其酒宴ノ席ニ臨ム。中門ヲ荒ラカニ歩ケル跫ヲ聞テ、化者ハ掻消様ニ失セ、相模入道ハ前後モ不知、酔伏タリ。燈ヲ挑ゲサセテ遊宴ノ座席ヲ見ルニ誠ニ天狗ノ集リケルヨト覚テ、踏汚シタル畳ノ上ニ禽獣ノ足迹多シ。城入道、暫ク虚空ヲ睨デ立タレ共、敢テ眼ニ遮ル者モナシ。良久シテ相模入道、驚覚テ起タレ共、惘然トシテ更二所知ナシ。

  後日ニ、南家ノ儒者・刑部少輔仲範、此事ヲ伝聞テ、『天下将乱時、妖霊星ト云悪星下テ災ヲ成ストイヘリ。而モ天王寺ハ是仏法最初ノ霊地ニテ、聖徳太子、自日本一州ノ未来記ヲ留給リ。サレバ、彼媚者ガ、天王寺ノ妖霊星ト歌ヒケルコソ怪シケレ、如何様、天王寺辺ヨリ、天下ノ動乱出来テ、国家敗亡シヌト覚ユ、哀レ国主、徳ヲ治メ、武家、仁ヲ施シ、消妖謀ヲ被致ヨカシ』ト云ケルガ、果シテ思知ルル世二成ニケリ。彼仲範、実ニ未然ノ凶ヲ鑑ケル博覧ノ程コソ難有ケレ。

 

 

 [現代語訳]『太平記』巻五、北条高時が田楽に没頭すること、および闘犬の事

  このころ、京都では田楽がはやっていた。北条高時がこれを聞きつけ、京都の新座・本座などといわれる田楽法師を鎌倉によび、その芸に血道をあげていた。あげくに、幕府の上層部に田楽法師をひとりずつ預けて着飾らせたので、「これは誰のパトロン」「これは誰のパトロン」などと言って、その綺羅を競うことになった。酒宴になって、高時が田楽法師たちに曲を命じたら最後、参加者は競って彼らに自分の着物を褒美に与えた。それだけでも、どれほどの浪費になるであろうか。

  ある夜に酒宴があり、高時は呑み過ぎて、みずから田楽を舞った。別に芸人の田楽でもなし、四十過ぎの男の舞であるから、見苦しいには違いない。そこへ突然、どこの出身とも知れぬ田楽法師が四十余人、乱入して来て、歌舞を演じた。高時が見るに、その歌舞は実に面白いものであった。しばらくすると、その歌の詞が「天王寺のや、妖霊星を見ばや」と変わった。召使いの女が、妙に思って障子の隙間から覗いてみると、田楽法師と思っていた連中は、すべて烏天狗なのであった。

  驚いて女は、城入道(秋田城介・安達時顕)に使いを走らせた。安達時顕は押っ取り刀で駆けつけたが、その足音を聞きつけ、烏天狗たちはすぐに姿を消した。現場についた時顕が灯りをつけてみると、畳にはたしかに烏天狗がいたとおぼしき鳥の足跡が残っていた。時顕があたりを見回しても、もはや烏天狗の姿は見えない。当の高時はびっくりして目を覚ましたが、茫然として前後のことは覚えていないという。

  後日、南朝の儒者である刑部少輔仲範が言うには「天下兵乱の時、妖霊星といって、悪星が下って災いをなすと伝える。天王寺は、はじめて仏教が興隆した場所であり、ここで聖徳太子が未来記を記された。あの烏天狗が『天王寺のや、妖霊星を見ばや』と歌ったのは、おそらく河内のあたりに兵乱の種があることを示すのであろう。この時におよんで、朝廷は徳を治め、幕府は仁を施して、このような怪異を除くべきである」と発言したそうだが、はたしてその通り、世は長い戦乱の状態となった。このように発言した仲範は、将来の凶事を見極める、すぐれた人物であったと言うべきであろう。

 

 

 [意訳]

  (着物の裾を短くしたギャル五人が、北条高時のいる座敷に入って来る)

  ギャルA・B・C・D・E「入道、こんばんはー! 歌って踊れる執権さまがいるって聞いたんでー、京都から遊びに来ちゃいましたー!」

  高時「え? 何、何、何なの? ほー! ほー! おネエちゃんたち、カワイイねえ! しかも、美脚だねえ! まあ、入りなよー」

  ギャルA「わたしたち、五人で諸国廻遊して、踊ってるんですけどー」

  ギャルB「五人あわせて、KTG5っていいまーす!」

  高時「KTG?・・・よく分かんないけど・・・どっから来たの?」

  ギャルC「京都の愛宕山でーす!」

  ギャルD「わたしは鞍馬山でーす!」

  高時「へー、都会だねー」

  ギャルE「ぜひ一緒に、田楽を踊ってほしくってー!」

  高時「え? あ、そう? じゃ、曲は?」

  ギャルA「いま京都ではー、『天王寺のやー、妖霊星を見ばやー♪』っていうのが流行ってまーす! きゃはははは、アゲぽよー☆」

  高時「天王寺のやー、妖霊星を見ばやー♪」

  ギャルB「入道、うまーい! アゲぽよー☆」

  高時「え? あ、そう?」

  ギャルC「あと、盛り上がろうと思ってー、元の国の紹興地方から、とっても美味しいお酒も買って来ましたー」

  高時「ふーん、国際的なんだねー」

  ギャルD「じゃ、一杯呑んでくださーい」

  高時「お、そう、あんがと・・・ガホ、ゲホ、ゴホ!! ちょ、これ・・・キツくない?」

  ギャルA「大丈夫ですってー、もー、じゃんじゃん呑んじゃってください」

  ギャルB「入道、アゲぽよー☆」

  ギャルC「アゲぽよー☆」

  高時「アゲぽよー☆」

  (さんざん呑まされる高時)

  ギャルC「酒壺、空いちゃいましたー! じゃ、入道、これ被って踊ってくださーい」

  高時「アゲぽよー☆」

  (酒壺を被って踊り出す高時。壺を被ってる上からボコボコにされるが、まったく気づかない。しばらくして、騒ぎを聞きつけた安達時顕が押っ取り刀で座敷に駆けつける)

  時顕「おやっさん! 何の騒ぎっすか!? うわ! 出た! 妖怪! 一体何してんだ、テメーら!」

  ギャルA「KTG5でーす!」

  時顕「KTG? ん? ・・・って、『烏天狗』だろーが!! ナメてんのか!?」

  ギャルB「わたしたち、何も悪いことしてませーん」

  時顕「してんだろーが!! ウチのおやっさん、誑かそうとしやがってよ!! 大体、テメーら、何だそのカッコ? えと、あの、その・・・『おニャン子』か!?」

  ギャルC「オジさん、古ーい!!」

  時顕「あ? じゃ、あの、その・・・『オナッターズ』か!?」

  ギャルD「言ってる意味、分かんなーい」

  時顕「どーだってイイんだよ、んなこたァ!! あれ? 消えた? どこ行きやがった? ・・・おやっさん! 大丈夫っすか!?」

  高時「アゲぽよー☆」

  (しばらくの沈黙)

  時顕「・・・あの・・・殺してイイっすか?」

 

 

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(2011/05/29掲載)